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マクガフィン(MacGuffin, McGuffin)とは、何かしらの物語を構成する上で、登場人物への動機付けや話を進めるために用いられる、仕掛けのひとつである。登場人物たちの視点、あるいは読者・観客などからは重要なものだが、作品の構造から言えば、他のものに置き換えが可能な物をそう呼ぶ。

概要[]

マクガフィンという言葉はアルフレッド・ヒッチコックがしばしば、自身の映画を説明するときに使った言葉である。 オクスフォード英語辞典によると、ヒッチコックは1939年コロンビア大学での講義で

私たちがスタジオで「マクガフィン」と呼ぶものがある。それはどんな物語にも現れる機械的な要素だ。それは泥棒ものではたいていネックレスで、スパイものではたいてい書類だ。

と語っている。またフランソワ・トリュフォーによるヒッチコックの長時間インタビュー集『映画術』[1]には、このマクガフィンへの言及が何度もある。

ラディヤード・キプリングという小説家はインドアフガニスタンの国境で現地人とたたかうイギリス軍人の話ばかり書いていた。この種の冒険小説では、いつもきまってスパイが砦の地図を盗むことが話のポイントとなる。この砦の地図を盗むことを<マクガフィン>といったんだよ。つまり、冒険小説や活劇の用語で、密書とか重要書類を盗み出すことを言うんだ。それ以上の意味は無い。[2]

マクガフィンとは単なる「入れ物」のようなものであり、別のものに置き換えても構わないようなものである。たとえばヒッチコックは『汚名』(Notorious、1946年)を企画していたとき、ストーリー展開の鍵となる「ウラニウムの入ったワインの瓶」に難色を示したプロデューサーに対して、「ウラニウムがいやなら、ダイヤモンドにしましょう」と提案している[3]。ヒッチコックにとって重要なのは、ウラニウムという原子爆弾の材料ではなくてそれをきっかけにして展開されるサスペンスだったのである。物語にリアリティを与えようとシナリオライターやプロデューサーはそうした小道具についても掘り下げようとするのだが、ヒッチコックはそれは単なるマクガフィンだからそんな必要は無いという態度をとった[4]。ヒッチコックによれば、マクガフィンに過ぎないものに観客が気を取られすぎるとそれに続くサスペンスに集中ができない。だから、マクガフィンについては軽く触れるだけで良いというのがヒッチコックの作劇術であった。

  1. 山田宏一蓮實重彦訳『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』晶文社、1981年、ISBN 0074-5641-3091
  2. 『映画術』pp.125-126
  3. 『映画術』pp.160
  4. 『映画術』p.126 「わたしのやりかたに慣れていないシナリオライターと仕事するときには、きまって<マクガフィン>のことでもめるんだよ。相手は<マクガフィン>とは何かということにどうしても執着する。なんでもないんだ、とわたしは言うんだよ。」
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